「この犬をご指名ですか」
家令はうーん、と唸り、困ったように微笑した。
「こいつはちょっと難が……」
あなたの表情を誤解して、彼は言葉を付け足した。
「器量が悪いというわけではないので。ただ、調教が成功していないという点では仔犬も同然でして。なかなか太いやつで――」
仔犬時代に二度の逃走歴があり、ヴィラの紳士たちの評判は悪かった。
事情があって、四肢切断などの厳罰を与えるわけにはいかなかったが、 ヴィラでも調教しなおさせるか検討しているという。
「こんなトウのたった犬ではなく、ほかの仔犬で遊ばれては?」
|