家令はあなたの指名に微笑んだ。
「けっこうでございます。
この子はお客様がはじめてのご主人様となります。警官とは思えないほど純朴、性質も素直、よい犬になる素質を備えています。よくしつけてやってください」
家令は端末を操作し、あなたの仔犬を手配した。
ほどなく、背の高い男が現れる。 肩の実った精悍な美男子だった。
家令は彼を紹介した。
「お客様のお手伝いさせていただきます、アクトーレス〔奴隷監督〕です」
アクトーレスは慇懃に挨拶した。
「仔犬館はこちらになります。どうぞ」
長身のアクトーレスについてパルス・ウルバナを出る。
仔犬館は隣接している。
誰でもがこの館に入れるわけではない。 数の少ない初物、仔犬をいじれるのはあなたのようなパトリキ(貴族)と呼ばれるVIP会員だけである。
柱廊玄関を入り、吹き抜けの間を抜けると、涼やかな中庭に出た。
中庭には、談笑する主人たちの足元にそれぞれ仔犬がうずくまっていた。
はだかに剥かれ、首輪をつけられた美しい男たち。
回廊を通るあなたの姿にびくつき、剥き出しの尻をできるかぎりちぢめている。
まだ調教に慣れぬ。
仔犬館ならではの風景である。
三階にあがり、案内人は回廊に面したドアのひとつを開けた。
部屋は明るい。
ドーム状の屋根の中央には明かり窓が開けられ、そこから大理石の床に陽が差しこんでいる。
その床には、若い男が鎖でつながれていた。
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