真っ赤なオーバーを着込み、ブーツを穿き、つけ髭をつけると、でかいアクトーレスが言った。

「完璧だ。孤児院に行ったらスーパースターじゃよ」

 行くぞ、と痩せたサンタがうながす。おれの書いたカードの束を見て、

「これ、クリスマスカードか。匿名か」

「はい。差出人は『友だち』です。全部、手書きで――」

 見せようとしたが、彼はOK、とかまわず白い袋に詰めた。

「プレゼントといっしょに渡してくれ。あと、きみはドムスには入るな。規則だからな」

 おれたちは地下からバンに乗り込んだ。



 バンはプレゼントの袋でぎゅうぎゅうづめになっていた。おれはその隙間にはさまった。

「赤い袋が先だ」

 痩せたサンタが運転しながら言った。

「赤いのがドムス用。緑は成犬館。白い袋は病院。中身が少し違うから間違えんな」

「おれのカードはどこに配ればいいですか」

「何枚ある?」

「900枚ほど」

 サンタがむせた。
 おれはヴィラにどれだけの犬がいるか知らない。クリスマスの朝、もらいはぐれて悲しい思いをするやつが出ないよう書きまくっていた。

「何軒まわらせる気だ。100もあれば十分だ!」

「ほかのデクリアにもわければよいじゃろう」

 でかいサンタは振り返ってウインクした。

「900枚手書きとはがんばったな。本物のサンタよりガッツがあるぜ」

 痩せたサンタが携帯で連絡する間、おれとでかいサンタは訪問の段取りをおさらいした。
 おれは今さらながら少し気後れした。

「おれが犬だってバレたらまずいかな?」

「知られないに越したことはないが、べつにかまわんじゃろ」

「犬がアクトーレスの振りして、規則違反だって言われたら」

「ホッホッホですべてすませる!」

 ホッホッホ、ホッホッホと笑いあっていると、痩せたサンタが携帯を離して、うるせえ、とわめいた。


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