蝶たちの苦悩  ギイ様作品



「さて、もう一度確認。今ならまだ俺は帰る事が出来るが、手伝った方がいいか?」
 ベッドの上に座った状態で、章夫に背中を預けているハルに聞く。

「・・・うん、居て欲しい・・」

「よし、じゃもう『待った』と『やめる』は無しだ」
 そう言うと、二人を向かい合わせになるように対面座位で抱き合わせる。

「いいか、二人は恋人同士だ。今から気持ちよくなる為のセックスをするんだ」
 俺の言葉に2人が頷く。

「第三者の俺が居るからムードには欠けるが、そこは今回治療の一環として目をつぶれ。じゃアキオ、手っ取り早くその気になるように、ハルにキスしながらペニスを触れ」
 恥ずかしそうに目を伏せた2人だが、俺の言葉におずおずと従う。

「んっ・・ふぁ・・」
 2人の舌が絡み、息が弾み始める。

 ハルが夢心地の表情を浮かべて、章夫の首に手を回しキスに応えている。

 俺はローションを指につけ、ハルのバスローブの裾をそっと捲った。

「あっ!」
 俺の手が尻に触れ、ハルはビクッと体を硬くする。

「大丈夫だハル。お前を抱いてるのはアキオだ」
 俺はハルに声をかけ、中指を挿入する。

「ん〜・・あぁ・・」

「春樹・・大丈夫だ」
 章夫はハルの髪にキスを落とし、安心しろとなだめる。

「あん・・・あっ・・そこダメ」
 俺は中に入れた指で、ハルの前立腺を擦り上げる。

「うぅ・・あっ・・く・・苦しい」
 ハルが刺激から逃げる為に、章夫の腕を押しのけようともがく。

「ハル、苦しいんじゃない。気持ちいいんだ」
 きつく目を閉じ、イヤイヤと首を振るハルに教える。

「あぁん・・ヤダ・・・・あき助けて」

「ドクター」
 苦しいと泣き始めたハルに、章夫が俺を見る。

「大丈夫だ。ハルにちゃんと声をかけてやれ」
 俺は手を緩めず、ハルを射精へ向けて追いやる。

「春樹、気持ちいいなら出していいから」
 章夫はさっき俺が教えたように、ハルに声をかける。

「あぁー・・やだー・・もう許して」
 ハルは快感を受け止めきれず、苦しいと必死になってもがく。

「ハル、これは罰じゃない。調教でも、お仕置きでもない。今お前を抱いてるのは誰だ?」 
 俺は少し手を止め、ハルに考えるように促す。

「はぁ・・はぁ・・・・あき・・あき」

「そうアキオだ。お前はアキオと気持ちいい事をしてるんだ」

「春樹・・好きだ」
 章夫はハルの頭をギュっと抱き、耳元で囁く。

「あき・・僕も」
 弱々しく章夫の背中に手を回したハルを確認し、俺はまた刺激を再開する。

「あっ!・・あん・・あぁ・・回さないで・・もうダメ!」

「春樹、イッていいから。我慢せずにイッていい」
 章夫は2人のペニスを一緒に握って擦っている。

「あ〜ダメ!・・もうそこやめてーー・・あぁ・・苦しい」
 ハルは辛そうに腰をくねらせる。2人が出した蜜が水音を立てていた。

「ハル、苦しいじゃない。気持ちいいだ」

「気持ち・・いい・・?」

「そうだ。アキオに抱かれて気持ちいいだ」

「あん・・いい・・ 気持ち・・いいよ・・」

「春樹、俺もだ。俺も気持ちいい」

「あき・・気持ちいいよ〜・・」
 ハルは泣きながらそう言うと、自分から章夫に口付ける。

「春樹・・愛してる」

「僕も・・・あっ・・あっ・・ダメ・・もう出ちゃう・・あん・・」
 ハルは迫り来る最後の瞬間に、足が痙攣し始めていた。

「あっ・・だめ・・もう出る・・」

「出していいよ、春樹」
 ハルが気持ちいいと言った所で、俺はそっと指を抜いた。

「あん・・なんで・・・?」
 ハルは突然なくなった刺激に俺を振り返る。

「アキオ、ハルに入れてやれ」

「えっ・・でも」
 章夫は少し躊躇いがちに俺を見る。

「大丈夫だ。ちゃんとフォローする」
 そう言って、ハルの入り口に指を沿え章夫を導いてやる。

「春樹、辛かったら言え」
 章夫の言葉にハルはこくこくと頷く。

「あっ・・あぁーーー・・あき・・」
 ズブズブと進入してくる章夫に、ハルの声は怯えていなかった。

「ハル、どうだ?」

「うん・・いい・・あき」

「春樹、ゆっくりな・・」
 ハル自身の体重で深くなってしまう体位だけに、章夫はハルの尻を下から支えて少し上に持ち上げた。

「あぁー・・ん〜・・」

 動き始めてすぐは気持ち良さそうにしていたハルも、だんだんと高まる射精感に惑乱し始めると、意識が混乱して暴れだした。

「あっ・・やだ! ・・苦しい・・」
 その言葉に章夫の動きが鈍る。

「春樹?」

「いきたい・・・いきたいのに・・・壊れちゃうよ・・」
 章夫の言葉が届かないのか、ハルはきつく目を閉じたまま首を振る。

「ハル、イッていいんだ」
 戸惑う章夫の代わりに答えてやる。

「ヤダ〜・・・苦しい・・助けて」

「苦しいじゃない。ハル、気持ちいいだ」
 章夫にゆっくり動くように指示し、ハルのペニスに手を添える。

「あぁーーだめ〜・・助けて出ちゃう!」

「春樹、出していいから」
 章夫もしきりにキスを降らせハルを気遣う。

「もうイキたい・・イキたいよ」
 まるで我慢されられているかのように泣くハルを見て、章夫に動きを止めさせる。

「えっ・・・あっ・・」
 今まで押し寄せていた快感が止まり、ハルがぼんやり目を開ける。

「ハル、お前は今アキオとセックスしてるんだろ?」

「あき・・」
 ハルは思い出したように、章夫の首に腕を回す。

「春樹、気持ちいいならイッていい。我慢しなくていいんだ」

「うん・・」

「イキたいぐらい気持ちいいんだろ?」 
 俺の質問にハルは頷いた。

「だったら遠慮せずにいけばいい。ほら再開だ。アキオ、ハルのいい所を擦ってやれ」
 章夫が再び動き始める。

「あぁ・・う〜ん・・」
 グチュグチュと音をたてながら、章夫がハルの中を出入りする。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
 ハルの声がだんだんと大きくなり、息を詰める事が多くなり始めた。

「春樹・・いいか? 俺もそろそろ限界だ」

「うん・・いい・・ 僕も・・あき・・」
 章夫の言葉に、ハルがちゃと答える。

「しっかり俺につかまって」
 章夫はハルの腰をガッチリ掴むと、ラストスパートをかける。

「あん・・あっ・・あき・・いく・・もうイク〜・・」

「春樹、いこう・・一緒に」

「うん・・いく・・もうイク・・あきーー!! 」
 一際大きな声をあげ、ハルは仰け反るように射精し、そのまま後ろに倒れ込む。

「おっと・・」
 俺はハルの背中を受け止め、シーツへ静かに下ろしてやる。

「思いっきりイッたな」
 満足そうに微笑みながらハルは夢の中に居た。

「どうだ?久しぶりのセックスは?」

「こんなに疲れるものでしたっけ?」
 章夫の返事に俺は笑い、お疲れさんと水を渡してやる。

「最後の段階でも、ハルはちゃんとアキオだと認識できてたから、今日の所は合格だな」

「もう大丈夫って訳にはいかないですかね?」

「ん〜まだ微妙かな・・ハルが混乱したら二度ほど止めたしな」

「そうですね」

「でもまあ、今日の事を踏まえれば、次は2人でも何とかなるだろう。一回最後まで出来たんだ、この事は自信に繋がるだろ」

「はい」

「じゃ後は精々2人で頑張ってくれ。俺は帰るよ」

「ありがとうございました。ドクター」
 ベッドから降りようとする章夫を止め、俺はドアに向かう。

「あっそうだ。お礼は日本の酒でいいからな」
 部屋を出る前に振り返り、章夫に伝える。

「わかりました(笑)たくさん送らせてもらいます」

「そりゃ楽しみだ。そのうち結果報告もしてくれ」
 俺はそう言うと、ホテルを出た。




「エンリケー。またハルのとこから酒が届いたぞ」

「おぉ、サンキュー。そこ置いといてくれ」

 あれから一ヵ月半が経とうとしているが、律儀にも章夫は毎週いろいろな日本の酒を届けてよこした。

 先週はまた彫り師のじいさんを連れてヴィラに来たとかで、直接俺の所まで酒を渡しに来たので、その後の様子を尋ねると、何度か混乱したハルがパニックを起こして中断したりしたそうだが、なんとかセックスはできているらしい。


『  
      エンリケへ
   
  あきが毎回楽しそうにお酒を探しては送ってるようだけど、
  くれぐれも飲み過ぎないようにね!

  一度日本に遊びに来て欲しいな〜

  美味しいお寿司屋に連れて行くよ♪

                              ハルより』

 文面を見る限り、落ちいてる様子が伝わってくるので俺は少し安心した。

 ハルからのメッセージカードにプリントされていた薔薇を見て、ふとハルの体に刻まれた白粉彫りを思い出した。

 今の調子で少しずつでもハルの心が安定していけば、いずれここでの暮らしが過去の事として封印できる日が来るだろう。そうすれば本当の意味でハルはヴィラから開放されて、章夫と共に心から自由にこの世で生きる事が出来るようになるはずだ。

 
 ハルの体で飛び回る、あの二匹の蝶たちのように・・・



                    ――了――



フミウスより

医者はつらい仕事だなあ(笑)。いやいや、治療のためにはエロいことも、真顔でやらなくちゃいけないのです。いちいち、ウハウハしていてはいけないのです。
(p・`ω´・q)
でも、指でなぶられつつの擬似3Pおいしかったです。楽しませていただきました♪



ご主人様、楽しんでいただけましたでしょうか。
ひと言、ご感想をいただけると鬼のようにうれしいです♪ 
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