当たり前の幸せ
私は今満足していた。
今まで主人に捨てられるのではないかとう不安から、何度となく自殺を図ったりしたが、今はヒロが居るおかげで、主人が居ない寂しさなんて全くと言っていいほど感じていない。
「あぁ〜・・・ヒロ・・もう・・・もうダメだ」
「イキそう? でもまだダメ・・俺がイクまで我慢して」
ヒロは後ろから私の尻を抱え込み、奥深くまでねじ込むように腰を振る。
「あっ、あっ、あっ・・・本当にもう・・・イク―――!」
私のペニスを握っていたヒロの指の隙間から、白濁した液が零れ落ちる。
「まだだって言ったのに」
そう言いながら、ヒロは腰を動かし続ける。
「ヤダ・・止めて! もうイッたから・・もうムリ」
「俺がまだイッてない。マキシムももっと感じて」
射精して、より敏感になっている体は、ヒロの声にさえ反応する。
「あぁ〜ダメ・・止めて・・止めて・・・ヒィ――!!」
体の奥に熱い飛沫を感じた瞬間、私もまた絶頂を迎えていた。
「主人の帰りにも気づかない程、2人で随分とお楽しみだね」
「ご・・ご主人様」
その声にヒロが慌てて私から離れてベッドを降り、主人の足元へと急ぐ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
立て続けに果てた私は、動こうにも体が重く、ベッドから起き上がれなかった。
「まったく、しょうがないな」
主人はわざとらしく大きなため息をつくと、ベッドに腰掛け私の尻に触れた。
「僕が居ない間、マキシムを寂しがらせない為にヒロが居るんだからいいんたけどね。こうも主人をそっち除けで盛り上がられるとね〜ちょっと嫉妬してしまうよ」
「ご主人様、申し訳ありません」
ベッドの下でヒロが主人に謝っている。
「まぁ、今日来ることを言わなかった僕も悪いんだけどさ」
「うぅ・・あぁ〜ん・・ご主人様・・」
主人は私の中に指を入れると、ヒロが出したものをかき出すように動かす。
「さて、2人にどんなお仕置きをしようか」
「あぁ・・ご主人様・・怖い」
私はベッドの上で後ろ手に縛られ、尻を高く上げた状態で目隠しをされていた。
「大丈夫だよ、マキシム。お前はこれを感じていればいい」
主人はそう言うと、私の尻にバイブを突っ込んだ。
尿道には棒が入れられている為、射精が出来ない。
「あ〜・・やだ・・」
見えない恐怖は、次に何をされるかわからない不安を掻き立てる。
「うぅ・・・ぐっ・・」
苦しそうなヒロの声が聞こえた。
私には目隠しによる恐怖を、ヒロには浣腸による苦痛を、主人は私達がそれぞれ苦手とするものを仕置きに選んだ。
「ヒロ、その状態で5分だ。5分以内に漏らしたら、さらにお仕置きだ」
「だったら・・栓を・・栓してください」
目隠しされている私は、ヒロがどんな状態なのかわからない。
必死で聞き耳をたて、状況把握に努める。
「じゃ、その栓と両方の乳首、それとペニスに錘をさげて15分でどうだ?」
「・・・はい・・お願いします」
主人とのやり取りを聞いていると、突然尻のバイブが振動を始めた。
「んあっ! ・・あぁ〜・・」
「マキシムが静かだと思ったら、スイッチを入れてなかったよ」
ヒロのセッティングが終わったのか、ベッドが少し沈み、主人がベッドに腰掛けたのがわかった。
「さぁ、2人とも僕を楽しませておくれ」
その後しばらく、部屋には私の喘ぎ声と、ヒロの呻き声が響いていた。
「あれ・・2人とも居ない」
お仕置きの後、そのままセックスにもつれ込み、3人でベッドに寝ていたはずが、夜中ふと目を覚ますとベッドには私しか居なかった。
ふらふらとダルイ体で階段を降りると、下の部屋から明かりが漏れていた。
(なんだよ・・2人して酒でも飲んでるのか?私も起こしてくれればいいのに・・)
『心配するな。注射の痛みなんて一瞬だ』
中からの声に、ドアを開けようとした手を止めた。
『はい』
『寝ている間に全て終わる。今お前を苦しめているものから解放されるんだ。怖がることはない』
(何?2人は何の話をしてるんだ?)
私は聞き耳を立て、中の様子を伺う。
『別に怖いとかは感じていません。マキシムのプレゼントにされる時、何も知らされていなかった俺は、あの時本当に薬殺されたと思ったんですから』
『あはは・・そうだったな。そんな事もあったな』
私のクリスマスプレゼントとして届けられたヒロが、箱を破って出てきた時の事を思い出した。
『あの時俺は一度死んだんです。そして生まれ変わった今は本当に幸せです』
『ヒロ・・』
『ご主人様には感謝してます。俺はご主人様の犬であるマキシムのペットの立場です。なのにこんなにしていただいてるだけで、本当にもう十分です。これ以上は何も望みません』
ヒロの言葉に私は急に不安になった。
ヒロは何を言ってるんだ?「もう十分」って、まるでお別れみたいじゃないか・・
『確かにマキシムのプレゼントではあるが、僕はヒロもマキシムと同じ、自分のペットだと思っているよ』
『ご主人様・・』
『だから僕の言うとおりにするね?』
『はい。あの・・マキシムには何と』
自分の名前が出て、私はドキッとする。
『ん〜そうだなぁ。お前が居なくなると、寂しがるだろうな」
(居なくなる!?)
思わず叫びそうになった口を押さえる。
『俺の事は別にいいんですけど、マキシムの事が心配で』
『そうだな。まぁ淋しいと言っても少しの間だろうから、僕が傍についてるようにするよ』
『ありがとうございます。それを聞いて安心して行けます』
(行く? 行くって何処に!?)
私が淋しがる? 安心して行ける?
今聞いた話を繋ぎ合わせると、ヒロがここから居なくなるって事だろうか?それに注射の痛みって何だ?まさか「薬殺」とかじゃないよな・・・?
私はすぐにでも中に飛び込んで、真実を確かめたい気持ちでいっぱいだったが、もし本当に今私が想像した事が事実だと言われるのが怖くて、足音を忍ばせ逃げるように2階へ戻った。
ベッドに戻ってからも色んな憶測が頭に浮かび、目が冴えて眠れなかった。しばらくして2人が戻って来たが、私は寝たふりをしたまま不安に心を震わせた。
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