陳腐な格好をさせられ、エリックは仏頂面して横を向いた。
その頭には小さな白いボンネット。濃紺のメイド服は、ミニスカートがパニエで広がり、淫らにすそをもちあげている。
――ミハイルとのレズショーとどちらがいい?
そう聞くと、しぶしぶとエリックはメイド服に袖を通した。
「もういいでしょ。この上、掃除でもしろってんですか」
あなたは愛犬のふてくされた表情を楽しんだ。掃除もいい。短いスカートの尻をあげさせ、床を雑巾がけさせてもいいが、もっとセクシーな遊びはないものか――。
あなたはエリックの本棚の隅にある料理の本に気づいた。
――キッチンでプディングを作ってくるように。
エリックはぎょっとあなたを見つめた。仏頂面が凍りつき、みるみる顔色がうしなわれていく。
「ご主人様、部屋のなかで! なんでもしますから」
あわてふためく軍用犬の顔がおかしい。あなたは笑いをかみ殺し、すがるエリックに、
――自分でいかないなら、フィルに連れ出してもらうか。
とおどした。
深夜のキッチンには、たまに寝ぼけた犬が飲み物を取りに下りてくる。
エリックは卵を割りながら、何度も神経質に背後をふりかえった。そのたびに片手が、無意識にスカートの尻を押さえている。
どうせ脱ぐんだから、と彼は下着をつけなかった。短いスカートは、彼のかたちよい尻と硬いパニエに持ち上げられている。シンクにかがむと、丸い尻たぶの肌が見え隠れした。
その風情がひどくエロティックだ。
あなたは近づき、彼の背後に立った。エリックの背が緊張するのがわかる。
「手伝いはいりません。あっちいってください」
あなたは笑い、背後から彼を抱きすくめた。エリックが一瞬、身をかたくする。
あなたは抱きすくめたまま、手を這わせ、彼の胸をまさぐった。
布地の上からもボタンのように硬い彼の乳首がわかる。それを二指ではさみ、大きく胸を揉みあげた。
「……」
エリックは卵のボールを抱えたまま、じっとすくんでいる。もう悪態はつかない。
この犬は哀れなほど乳首が弱い。
調教時には小さな乳房がそこにあった。その記憶か、少しなぶっただけで、立てなくなってしまう。
エリックは卵に泡だて器を突っ込んだまま、主人にいたずらされる小間使いのように、うつむいていた。
あなたは彼のメイド服をはだけた。じかに胸に触れながら、卵を混ぜるようささやいた。
エリックの手がのろのろと泡だて器を動かす。あなたはその首筋にキスを落とし、かわいいメイドの胸を愛撫しつづけた。
手のひらの下の筋肉は硬い。狼のように引き締まったからだだ。
だが、そこに豊満な乳房があるかのように、みだらに指をうごめかし、掴み、揉み上げる。
「ン……ごしゅ」
愛犬の手から泡だて器が落ちる。彼はガラスボールをつかみ、ふるえた。
あなたは胸を揉みつづけ、片手でひとつの乳首をつまんだ。
「ッ」
エリックがかすれた悲鳴をあげ、首をそらせる。両の乳首をつまみ、ひねり、舌でねぶるようになぞりあげる。
「……アッ、は……アアッ」
哀れなメイドは身をよじらせた。
硬いパニエが衣擦れの音をたてていた。エリックの腰が揺れている。
あなたの腰に尻をすりつけるように突き出している。スカートの前では、彼のペニスがパニエにこすられ、なやましく怒張しているに違いない。
あなたは笑い、からだを離した。
エリックがふりむき、泣きそうな顔でみつめる。
「ご主人様……」
彼はあなたの意図を解し、うなだれた。
キッチンだ。この瞬間にも仲間が降りてくるかもしれない。バカげた衣装を笑われるかもしれない。
だが、彼はすでに情欲に震えていた。主人がまたプディングを作れと命じるのを恐れていた。
彼は小さく毒づき、シンクにかがんだ。おずおずと手をうしろにまわし、スカートをまくりあげる。きれいな丸い尻をあらわにして、泣くように言った。
「はやく抱いて、おねがいです」
――了――
|