あなたはぬるい湯に身を沈め、手足をのばした。まるで雲のなかだ。湯の上にはクリームソーダのようにもくもくと白い泡が浮いている。
あなたがあごでうながすと、フィルは微笑み、バスローブを肩からおとした。
すんなりした優美なからだが現れる。少年のように涼やかな、均整のとれた肢体。過去の拷問の痕、少し大きめの乳首。白いすねが泡のなかに入ってくる。
フィルはバスタブの端におさまり、照れくさそうに笑った。
石鹸分をふくんだぬめりのある湯のなかで、たがいの足が触れた。
足をのばし、つま先で彼のすべらかな内腿を撫で上げる。
フィルはクスリと笑って、目を伏せた。
白い泡に隠れた湯のなかで、足指がフィルの内股をさかのぼっていく。硬いつめで、敏感な肌をなぞり、秘所へとたぐっていく。
内腿がかすかにこわばっているのがわかる。
足指の先で、彼の股間が緊張してあなたを待つのがわかる。
あなたは岩を這う小蟹のように足指を蠢かした。
白い泡のうえの彼の顔がこわばる。目元に赤みがさしている。
あなたは足のつけねへと指をのばした。感じやすい会陰、やわらかな粘膜に爪先をもぐりこませようとした。
しかし、ふいにフィルは足をとざした。
――だめですよ。
そういうように笑い、横を向いてしまった。
あなたは笑った。
この賢い犬は遊びを心得ている。うぶな少年のように、いいなりになどならなかった。
――手をつかわずに、イカせようなんてお断り。
とばかりに、フィルは浴槽の隅に逃げ込んだ。
となれば、あなたは手をつかわずに彼を落とさなければならない。
あなたは貝のように堅く足をとざしているフィルを追い、その膝に足指をかけた。
だが、こじあけるのは容易ではない。あなたはその膝に無理やり、足指をもぐりこませようとしたが、フィルも笑いながら膝をしめている。ぬるぬるすべる湯のなかではいっそう分が悪かった。
その時、あなたの目の端にバスグッズがうつった。
長い柄のついた豚毛のボディブラシがあった。
それをとると、フィルが口をあいた。
「え、それは卑怯――」
かまうことはない。あなたは泡のなかにブラシをもぐりこませた。
隅にちぢこまっているフィルのからだをブラシで追う。硬い毛でその足裏をなぞりあげると、彼は悲鳴をあげて飛び上がった。
「や、それは」
すぐにまた膝をとざしたが、すでに弱点は知れた。あなたはブラシで足裏をくすぐった。 硬い毛でなぞられると、フィルはもろくも身をほどいた。そうしながら、あなたは膝頭の間に足をねじこんでいった。
片足入れればあとはたやすい。
楔のようにつきいれ、さらに片足で押し開く。
フィルはあなたに足で、バスタブの端に貼り付けられた格好になった。
観念したように笑う。
彼は無防備に足をひらき、秘所をさらした。
手をつかえば、あなたの足を払うことはできるはずだが、それはしない。手を使わないのがルールだ。
あなたは獲物を味わおうとして、またいたずら心を起こした。
面白い玩具を持っているではないか。
フィルも気づき、あわてた。
「ご主人様、それはちょっと――」
あなたはブラシを湯のなかにもぐりこませた。
あ、とフィルのからだが踊る。
あなたは硬いブラシの毛で、フィルの秘所をかすめた。海草のように揺れるペニスを突き、感じやすい会陰を、海の生き物のようなアヌスをそろりとなで上げる。
針のように荒々しい毛の感触に、フィルの腰がひるむ。しかし、あなたの両足ががっちりとおさえて、逃がさない。
「アッ――、んっ、ひアッ」
強くはこすらない。感じやすい粘膜をかすめ、軽く突き、時に湯の流れのみあてて、それていく。
淫蕩な湯の感触、時にかすめる鋭い愛撫に、フィルの腰がもがくように揺れた。
「あ、ふ――」
だが、この意地っ張りはバスタブにつかまり、降参しない。
泡にもぐるように身をすくめ、無骨な愛撫に耐えている。
あなたは思いつき、ブラシの柄を逆さに返した。
「わッ、それはダメ」
柄で彼のアヌスをついた途端、フィルはわめき、バスタブを離した。
長い腕をのばし、あなたの首にからめる。降伏だ。
あなたは湯のなかで、その軽いからだを抱えあげ、口づけた。
――了――
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