おれたちはプレゼントを持って、町中走り回った。サンタの数が増えてにぎやかだ。

  クォンはベトナム人らしい。まだ十代で真っ黒な星の瞳がかわいかった。
  ダニーはハンサムな中年。クリスマスが大好きらしい。

  ふたりの新参サンタはハンドベルを持っていた。リンリン鳴らしながら、メリー・クリスマス! と呼びかけると、犬たちは皆、ぱっと顔を輝かせる。大勢のサンタにハグされて、幸せそうに抱き返す。

 船長は本当のサンタクロースタみたいだ。どの犬に対しても可愛くてたまらないというように声をかけた。車のなかでもバカ話ばかりして、楽しそうだ。

 一方、キーレンは悪態ばっかりついている。こんなイベントはくだらないとか、早く帰って寝たいとか、わざわざ志願するのはアホだとか。

「やつらはワン公なんだよ。ペットなんだ。ペットの機嫌とってどうすんだ? 自殺だ、ウツだってんなら、檻に入れてナヤミがなくなるまでいたぶりゃいいのさ。自分を人間だって勘違いするから、グズグズ不満に思ったりするんだ。プレゼントなんざ鞭でいい」

 気分に水を差すことばかり言う。
 だが、劉小雲は小声で言った。

「キーレンってすごいな」

「?」

「どの犬にもちゃんと名前で呼びかけてる。全部、暗記してるのかな」




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