「ちょっと小休止」

 船長がキーレンに呼びかけた。空気は冷たかったが、衣装のなかは汗だくだった。地下に車を止め、階段で地上の玄関にあがっていくので、さすがに少し足がだるい。
 ふたりのサンタはすでにへばっていた。

「なんか買ってくるか」

 キーレンが言った時、新参のクォンが、

「これ。差し入れらしいです」

 と車から紙バッグを出した。
 中からポットとサンドイッチが出てきた。

「ターキーサンド。さすが、アキラだ」

 船長がサンドイッチにパクついた。キーレンもひとつ取り、

「悪魔のようにこき使い、小さな慈悲をかけ、また悪魔のようにこき使う」

「緩急がポイント。テクニシャンやね」

 くだらないことを言って笑い、みんなでサンドイッチを食べた。
 ポットの紅茶は熱かった。少し甘く、ほっと腹が落ち着く。
 ふと、船長がフロントガラスを見て言った。

「キーレン、アンディのカード、ちょっとあまってる?」

「十枚ぐらいあまるだろ」

「一枚ちょうだい」

 彼はひとつ抜き取ると、車を降りた。
 地下の歩道をひとりの男がとぼとぼ歩いているのが見えた。

 船長は彼に近づき、声をかけた。
 何を言っているのか、エアコンの音でよく聞こえない。船長はその男と親しげに話し、カードを渡し、最後にハグして戻ってきた。

「船長の犬?」

 聞くと、船長は肩をすくめた。

「知らんおっさん。たぶん客」

「え?」

「でも、カードよろこんでた」

「……」

 おれたちは笑ってしまった。




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