リレー小説 ファビアン  ACT8後編 担当 かおる様


 「はっ……ぁ…」
 次々にローターが押し込まれて来て、更なる圧迫感が腹部を満たす。
「ヒッ!」
 胸への刺激が途絶えたと安心した次の瞬間、唾液に塗れた其処は乱暴にタオルで擦られて、唾液を拭われた。けれども唐辛子の刺激は残されたままで、灼熱の痛みはタオルで擦られた事で更に増した気がする。反射的に身を竦めたオレの手足に鞭が飛ぶ。
 生理的な涙にぼやけた視線に、楽しそうなぱすた様の笑顔が見えた。
「このままじゃ、ちょっとギャラリーには見辛いな。少し腰を上げさせた方が良くないかな」
 その提案はその場にいたパトリキ達の賛同を受け、俺の身体はごろりと横向きに転がされた。
 手際よく肩口に上げさせられていた手を背後に回され、短い鎖で繋がれた手枷を装着される。それをきつく締め付けられると、オレの身体は魚河岸に転がされたマグロよろしく、無造作にまた仰向けに転がされた。拘束された手首の上に腰が乗り、自分の重みがその手首に掛かり、新たな苦痛がオレを苛み始めた。手首の苦痛を軽減するために、俺は腹筋を引き締めて腰を浮かせようと下腹に力を入れた。
 これは? と問う声はwakawa様か……。ひそやかな、聞き取れないほどの声が何かを囁き、wakawa様の含み笑いがそれに続いた。尋ねていらしたのはトレイに残されたままのサージカルテープの事。その使用法はその直ぐ後、知らされることとなる。
「なに、を……」
 我ながらくだらない言葉だと思う。けれど、口にせずにはいられなかった。
 サージカルテープは音を立てて引き出され、千切られ、俺の両の乳首にローターを固定するように貼り付けられた。そして……。まだ未練を残したようにペニスの先端で口付けを交わすように蜜を啜っていた二人が離され、唾液と蜜をタオルでこそげ取るように拭われ。先端の小さな窪みに直接ミントタブレットを押し付けるようにして、その上にローターをセットされ、ずり落ちたりしないように頑丈にテープで固定された。
 アナルからは幾つのローターが詰め込まれたのだろうか。一つ一つにはそれほどの重量が無くとも、数が重なればそれなりの重さも感じるだろう。俺の下腹部は嫌な重みに満たされていた。
「まったく締まりの無い尻だな。入れる傍から出て来てしまうじゃないか」
「それは、これで栓を?」
 体内がざわめいてローターを吐き出そうとする動きがおサル様の不興を買ったようだった。それに答えたのはRay様。指でOKサインを出したのは、最初にこの場を仕切っていたK様だった。
「ああ、なるほどね」
 Ray様は笑ってバイブレーターを取り上げ、容赦なく突き入れてきた。下腹部に力を入れ続けていることで、緩やかに押し出されつつあったローターが、ごつごつとまた中へと押し戻される。
「で? スイッチはどうする?」
 後孔から幾筋も延びるコードの先端に付いたスイッチを二つほど手にしたヤマ様が、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「最初は一斉スタートで、どうかな?」
 やはりスイッチを両手に持ったさい様が周囲を見回した。
 スイッチを持って待機するパトリキ達は直ぐに同意を表明して……。
「それじゃ、カウントダウンをしよう」
 提案したのはさい様。
「3……2……1……Go!」
 その場にいたパトリキ達の声が揃ってカウントを数え、Goの合図と共に無数のカチッという無機質な音が響き……
「ぐっ……うあぁぁぁぁぁッ!」
 全身を容赦のない振動が襲ってきた。それぞれが一気にMAXまで押し上げたスイッチに、オレの体内に押し込まれた幾つものローターが震動してぶつかりあい、跳ねて、内壁を掻き回した。灼けるような乳首は痛いほどに震わされ、ペニスは……。余裕が無いほどにきっちりと巻かれたサックの中、その鋲に打ち付けられるように震動し、激痛に竦みそうになりながらも過敏な粘膜に感じる刺激に、新たな熱を孕み蜜を零し始めた。それは先端に押し込まれたミントタブレットを溶かし、尿道口に新たな冷たい痛みを呼び込んだ。
 痛いのか、気持ちよいのか、もう判らなくなっていた。
 ただ、反射のように脚が跳ね上がるたびに鞭が当てられ、下腹部に力が入るほどに排出されそうになるローターを、栓をするように挿入されたヴァイブレーターで突き込むように押し込まれ、乳首は痛いほどに震わされ続けた。
「ぅぐっ……」
 突然、喉奥、嘔吐中枢を突き上げるように、何かが突きこまれた。
「ね……、舐めてよ。もう、我慢できない……」
 俺の口腔にご自身のペニスを突き入れたシルル様が、蕩けるような表情で見下ろしていた。
 俺は突き入れられた熱の塊を包み込むように舌を絡ませ、軟口蓋で先端を締め付けるようにして、ゆっくりとそれを舐め始めた。それは口内で更に大きく姿を変え、俺の呼吸を奪った。
「うっ……ふ……」
 俺の口腔にペニスを突き入れ、僅かに腰を浮かせて揺らしていたシルル様の声が甘く変わる。
「シルル卿……。そんなに可愛らしい姿を見せ付けられては、私も我慢できませんよ」
 揶揄うような声が、その向こうから響く。
「おサル卿……ぁ……、そんな……」
 魅惑的なシルル様のアナルに、おサル様の指が挿し入れられたようだった。その指に翻弄されるように、俺の口腔でシルル様のペニスが暴れ、喉奥を容赦なく突き上げてきた。嘔吐中枢を突かれる苦しさに、反射的な涙が零れ、悲鳴とも呻きともつかない声が喉奥で潰されていた。
「あぁ……凄い……いい、よ」
 快に翻弄されたシルル様が俺の上で腰を激しく揺らした。
「痛……っ!」
 俺の歯がシルル様のペニスに当たったのか、小さな悲鳴を零して眉を寄せられた。
「歯を立てたのか? お仕置きだね」
 wakawa様が口角を僅かに引き上げるようにして、微笑んだ。
「お仕置きだ。可愛いシルル卿に歯を立てたんだからね」
 wakawa様の手が俺のペニスを、サックごと握り締め、先端にセットされたローターを尿道口に強く押し付けた。ミントタブレットが更に奥へと押し込まれ、過敏な粘膜に激痛と快をもたらす。
「ぐぁぁ……」
 軋んだ悲鳴が塞がれた喉から零れた。刹那、喉奥に熱いものが叩きつけられる。シルル様が達したのだった。余裕のない俺は精液を気管に詰め、激しく咳き込んだ。熱を失ったペニスが口腔から抜け出すと同時に、咳は更に激しくなり、口中に溜まった精液は口角から溢れて頬へと零れた。
「零して良いと、誰が許可したのかな?」
 七瀬様が酷薄な笑みを浮かべ、手首の苦痛を軽減するために浮かされた俺の尻へと、鞭を一閃させた。
「ちゃんと飲めるまで、終わらせない」
 入れ替わるように、ヤマ様が俺の口腔を満たすようにペニスを突き入れてきた。
 先ほどの精液に噎せ続ける俺は、全身を痙攣させるように咳き込みながら、ヤマ様のペニスに舌と頬粘膜で奉仕する。
 wakawa様は楽しそうに、サックごとペニスを握り締めたまま、MAXで振動を続けるローターを、強弱をつけるようにペニスの先端に押し付けることを繰り返している。ミントの刺激も、ペニスに食い込む鋲も苦痛に他ならないのに、ローターの刺激には快を覚え、その狭間で翻弄されながら、俺は達することの出来ないままに悶え続けた。
 ヤマ様が俺の口中に精を吐き出した。それでなくとも仰臥した姿勢では物が嚥下しづらい上に、呼吸もままならず、まだ先刻の咳き込みが完全に治まらない俺は、やはりその精をも零してしまった。
「おや、また失敗か?」
 Ray様が入れ替わりにペニスを口腔へと突きいれ……。また、ローターを押し付けられ蜜を零す先端の、括れの辺りにビタ様の舌が絡みつく。体内に埋め込まれたローターは、それぞれを別の手が掴み、コードを引いて抜かれようとし、それをまた誰かが手にしたヴァイブレーターが前立腺を突き上げるようにしながら押し戻される。
 喉奥を散々蹂躙したRay様が達したのを感じ、呼吸を奪われたまま、また意識が遠のいて行く俺の耳に、大仰な家令の溜息と、気管からの吸引の準備をと指示を出した外科部長の声が微かに届いたような気がした。




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