悪党クラブ  第2話

 三か月ほど前、おれたちは学校生活に退屈しきっていた。
 多すぎる勉強時間、少なすぎる飯、ブ男ばっかりの寮。押し付けられる寮対抗のスポーツ。

 こんな暮らしを四、五年も続けると、じつに退屈な人間ができあがる。きれいな発音で話す、礼儀正しい、去勢されたオンドリだ。

 われわれが卒業した後の社会には、こういう退屈な男が必要なのだ。
 世界にはもう未踏の土地はないのだから。

 さいわい、おれのまわりには数人、まだ躾の行き届かないやつらがいた。監督生になどお呼びもかからない、アホで愉快な連中だ。

 全国学力試験が終わった時、そのひとり、『変態トニー』ことアンソニーが面白い話をした。
 親父のつてで、ヴィラ・カプリの会員になったのだという。

 ヴィラ・カプリ。
 男をさらって、性奴隷として売るゲイ専門の人身売買組織だ。アフリカにその基地がある。

 ユニークなのは、それがどこの政府も手を触れぬほどの、軍事力を持っているということだ。無法の犯罪組織ですら、手出ししないという。

「うちに一匹、その『犬』がいんだけどさ」

 アンソニーは性奴隷を犬、と呼んだ。

「ほんっとに犬そのものだぜ。首輪してさ。四つん這いで歩いて。おしゃぶりもうまい」

「親父と色子取り合ってんのか。世も末だな」

「親父にゃ内緒だよ。でも、今度の夏、うちに来ないか。親いないから」

 おれはうなった。たしかにものめずらしいが、所詮金で買えるものだ。すぐ飽きる。
 それよりもっと刺激的なものはないだろうか――。

「なあ、おれたちでヴィラ・カプリを作るってのはどうだ」

 アンソニーはきょとんとした。
 おれは校舎に向かう若い男の姿を見送っていた。男は数冊の本を抱え、足早に歩いていく。下級生が挨拶すると、なにごとか言って笑った。
 その時、そこだけ明るく見えた。

「あれを、獲らないか」

 おれは若い教師を指差して言った。




 悪だくみには、すぐに仲間が集まった。おれもいれて総勢七人が悪党クラブを結成し、夏休みを有意義にすごすために計画を練った。

 おれたちの寮でパパと呼ばれる世慣れた男、クラレンスはすでにヴィラの会員だった。この男は真性ホモでうるさかった。

「おれはデミルみたいなほそっこいのはあんまり好みじゃないんだ。もっとでかいのいかないか。ガンガン抵抗してくるようなやつ」

 変態アンソニーがナイーブな美男じゃなきゃイヤだ、と言い張り、結局、ふたり誘拐することになった。

 荒仕事はプロに任せる。おれたち金持ちのドラ息子には、彼らを雇う資力があった。
 調教場所はアンソニーの田舎邸だ。

「見つかったら、放校になるな」

 仲間がもっともな心配を口にした。
 おれはおかしかった。こいつらは警察の心配はしないのだ。

「そうなったら、奥の手があるさ」

「どうするんだ」

「ハンサムなやつを一匹、校長のベッドに送り込んでおけ」

 みんな笑った。
 わが校の校長は、熱心な教育者で、自分でもそれをうるさく宣伝する。
 やり手の男だった。古い名門校を立て直した手腕が注目され、よくマスコミにも登場する。
 
 しかし、ペニスのほうもやり手だ。何人かの生徒は彼と寝ていた。
 誰も告発しないのは、よほど彼のテクがすばらしいのか、もしくは大学に入る時、校長のコメントが必要なためだ。それに、黙っていれば、監督生に選ばれないともかぎらないではないか。

 これが名門校の裏の顔だ。どこも同じようなものだろうが。

 パパ・クラレンスは言った。

「ふたチームに分かれようぜ。おれたちはグリフィスを、おまえらはデミルを。夏中使って、犬を徹底的に仕込む。うまく仕込めたら、来学期から無聊の夜は楽しめるってもんだ」




 金で雇った人攫いたちの仕事は確かだった。
 ふたりの教師は夏休みがはじまったその日に、誘拐され、アンソニーの田舎邸に配送された。

「どうよ。処女だったか」

 おれは少し遅れて到着した。アンソニーはクスクス笑って、

「さきに馬でひと回りしないか」

「なんだよ、馬って。もう喰ったんだろ」

 アンソニーは笑って答えず、おれを厩舎に引き入れた。
 厩舎には見事なサラブレッドが四頭つながれていた。それらの奥に、デミル先生はいた。

(おお)

 おれは眼を細め、罠にかかった獲物を見つめた。

 デミル先生は囲いの柱に四肢をつながれていた。ワイシャツ一枚で、下半身は裸だ。大理石のようにすべらかな白い足が大きく開かれている。
 顔には革棒の口枷をかけられ、驚愕しておれを見ていた。

「ふ……ウウッ」

 ヘイゼルの眼がおどろきと怒りできらきら光っている。裏切られた者の顔だ。

「におうな」

 おれはからかった。敷き藁には小便のにおいがした。

「馬番に替えさせてるんだが、また垂れ流したらしいね」

 一度洗うかい? とアンソニーが聞いた。腹のなかを、だ。

「べつにいいよ。クッションある?」

 おれはベルトをはずした。コンドームをすればいいだけのことだ。

「ウ」

 デミル先生の顔が引き攣った。その細い四肢がうろたえたように足掻く。足の鎖が鳴って、先生の足を引っ張った。

 アンソニーはデミル先生の腰の下に毛布の塊を押し込んだ。

「う、グッ、ウウ」

 せりあがった股間からワイシャツのすそがひらく。小鳥のようなペニスが露わになり、その下のばんそうこうが見えた。

「なんだこりゃ」

 引き剥がすと肛門にえんぴつが数本ささっていた。

「狭いんだもん」

 アンソニーが言った。

「きつくてきつくて、ちんちん血まみれ。ギロチンかと思ったぜ」

 穴を拡張するために毎日一本増やしていくのだという。おれは笑って、それを全部抜いた。

「へたっぴ。やさしくしてやりゃいいのさ」

 指に唾をつけ、肛門のなかにねじりこむ。

「ぐ、ンーッ」

 先生は目を剥いて暴れた。跳ね上がる腰をつかみ、指を奥につきいれる。たしかに硬い。おとなの筋肉は下級生たちの尻よりも硬かった。
 だが、腹のなかのプラムほどのふくらみもはっきりわかる。

「ッ」

 撫でまわすと、先生の眼がたじろいだ。彼はにわかにあわて、おれを振り飛ばそうと跳ね上がる。鎖がはげしく鳴り、藁が舞った。

「ほら、いい子いい子」

 アンソニーがその胸を押さえ込む。
 先生はわめいた。がんじがらめにおさえこまれ、尻穴をほじられ、うろたえていた。

 おれは指を増やして愛撫を続けた。しつこく尻穴のなかを撫でまわし、指の節でひろげる。指先でふくらみを突き、たんねんに揉み込むと、先生は叫べなくなった。なじる声に息がまじっている。

「ン、ンンッ」

 ピンク色のペニスが浮き上がり、濡れていた。
 まだ二十七だ。木石というわけにはいかない。

「もう、早くやっちまえよ。馬が怯えるじゃないか」

「はいはい。馬がね」

 おれのほうもあたたまっていた。股間でパンツから飛び出しかけているものに手早くコンドームをかぶせる。こっちにも唾をつけると、先生のなかにもぐりこんだ。

「ッ」

 先生は歯をくいしばって身をこわばらせた。
 いやだ、と言っていた。
 必死に拒み、硬い筋肉でおれのペニスを押し潰す。岩の隙間にねじいれるようだ。

 だが、それぐらいの抵抗ははじめてではない。おれは彼のペニスを握った。

「ンッ」

 尿道口をほじってやると先生のからだがひるんだ。腰から力が抜けてしまう。おれは叩き込むように腰を打ち当てた。

「グッ」

 細い腰の奥までわが身を押し込んだ時、先生と眼が合った。
 美しい目がショックを受け、濡れていた。透明の涙があふれ、目尻にこぼれつたった。
 刹那、おれは酒に酔ったような気分がした。心地よい高揚感と、破壊の解放感。たのしさとにがさの混じった興奮に、はらわたがはげしくたかぶった。



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