悪党クラブ  第10話

「なあ、今日、うさちゃんだろ」

 食事の時間、アンソニーがさりげなく言った。

「今日、おれ、クマの日なんだ。替えない?」

 うさちゃんはデミル、クマはグリフィス先生だ。今夜の割り当てだ。

 アンソニーはデミル先生を可愛がっている。デミル先生だけを抱きたいのだが、グリフィス先生の権利も抜け目なく保有している。
 こうして交換したいがためだ。

「ダメ」

 おれは笑った。

「おれだって、たまにはあっちも味わいたい」

「いいじゃない。おまえはクマ好きなんだからさ」

 おれとパパ・クラレンスとスタンはグリフィス先生の大きな尻が好きだ。男らしい体も、感じやすい乳首も気にいっている。

 もっとも最近は、スタンは新しい恋人ができ、クラレンスはAレベルの試験勉強で忙しい。たまにしか抱かない。もっぱらおれがかわいがっていた。
 といって、スコット・デミルがいらないというわけではないのだ。

「うさちゃんも好きさ。あの丸い尻も」

 食堂の一段高い教師たちのテーブルを見やった。デミル先生は物憂く皿をかきまぜている。

「なあ、コンラッド」

 めずらしくアンソニーが名前で呼んだ。気のせいかもしれないが、と言い、

「あいつ――おまえによろめいてるんじゃないか?」

 おれは肉を噛みながら友人を見つめた。アンソニーはつまらなそうに芋をつつき、

「おまえにだけは目つきが違うような気がするんだよね。何かあるとすぐおまえの顔見るだろ」

「そりゃ見るさ」

 おれは肉を飲み込み、

「おれはいい男だからな。抱き方もうまいし」

「人でなしなのに」

「小さい問題だ」

 おれは笑って、アンソニーをなだめた。

「ただ顔色見てるだけさ。おれはきびしくあたるから。あと、おまえの趣味がイヤってのもあるかもしれんな」

 アンソニーは、いいの、とふてくされた。

「おむつはおれの愛だ。おれはうさちゃんがかわいいんだ。彼のウンチも。邸において、おまえら野獣の手から守りたいぐらいだよ」 

 アンソニーの言葉は本音だ。
 調教中からデミル先生を独占したがっていた。本当に自分だけのペットにしたいらしい。

 だが、それをやれば仲間から総スカンを喰らってしまう。背信は伝わり、わが校のどのネットワークからも相手にされなくなるだろう。気まぐれな男だが、さすがにそれはできなかった。

(しかし)

 アンソニーがやきもちを焼き始めたのは面倒くさいことだ。こじれるなら、デミルから離れたほうがいいかもしれない。




「デミル先生、補習をお願いできますか」

 部屋をたずねると、先生は暗い目でむかえた。かぼそい声で、入りなさい、とうながす。
 ドアを閉めると同時に、彼はじっと立ちつくす。おれの命令を待っている。

「宿題の採点は終わったのか」

 先生は小さくうなずく。

「何してた? テレビでも見てた?」

 彼は首を横に振った。少し目元が落ち着かない。
 おれは思い出して、寝室に入った。ベッドに座ると、先生の細身を引っ張り、ひざの上に抱き取った。

「小便したか」

 先生は首を横に振った。

「したいか」

 小さくうなずく。

「いいよ。して」

 おれは彼の股間に手を置いた。ズボンの布地の下にぶあつい紙オムツを感じる。その下にペニスのふくらみがあった。

「……」

 先生の睫毛が刹那、ふるえた。手の下に砂の落ちるような振動が伝わってくる。ほのかなぬくもりが手の下にひろがった。

 その目元が赤い。
 決まり悪げにうつむき、息をつめている。

 小便は長かった。温かいものが、手の下でいつまでも注がれつづけた。

 それがまた静かになる。
 先生はおれの腕のなかで絶え入るように目をふせている。命令を待ち、すくんでいる。

 おれは彼のベルトとファスナーをはずし、中に手を入れた。紙おむつの上から彼のペニスをにぎる。

「ッ」

 先生が背を丸める。濡れたおむつごとペニスをつかむと、小便が染み出るようだ。おれはそれをやわやわと揉んだ。

「――」

 目元がさらに赤くなった。濡れたおむつに揉まれ、腰がたじろぐ。嫌悪にその背がこわばっている。

 おれはその肩にあごをのせた。指をしつこく蠢かし、握り、しぼりあげる。生温かい水分を浴びせ、揉みあげる。

「ん」

 先生は顔をそむけた。手のなかのペニスは芯を生じていた。しだいに肥り、おむつを押しあげていた。

 おれは笑い、さらに強く握った。綿から水分があふれるほど。音がたつほど。

「あ、んッ」

 腕のなかで、華奢なからだがあえぎ、身悶えた。唇がわななき、舌先がのぞく。

「は、あッ――ンッ」

 咽喉をつめたと思うと、手のなかでペニスが跳ねた。
 先生はあえいだ。息がしずまるとともに、その頬が嫌悪に濁っていく。
 おむつのなかはまた汚れていた。

「洗っておいで」

 おれは彼を離し、ベッドに寝転んだ。

「五分だ」

 先生はだまって立ち上がった。その目がまた濡れていた。




 ――今夜、たっぷり味わって、連中にくれてやろう。

 おれはベッドにあおむいて、アンソニーの拗ねた顔を思い出した。
 あの場で、彼に今夜の権利を渡してやってもよかった。だが、そこまでいさぎよくなれないのが、人情だ。

(今夜、抱き尽くして、くれてやるさ。かわいいのなら下級生にもいるしな)

 気づくと五分以上たっていた。おれは唸っておきあがり、バスルームをのぞいた。

「おい」

 先生はシャワーをつけっぱなしにしたまま、浴槽にうつむいていた。

 ――よく泣く男だ。

 おれはシャワーを止め、彼を引っ張りあげた。めずらしくその手が抗った。浴槽につかまろうとする。

 だが、問答するのも面倒だ。おれは荒っぽく彼をかつぎ上げ、ベッドルームまで戻った。

「今日はおムズか」

 ズボンを脱ぎながらからかう。「さっき気持ちよかったからか」

「ぼくはきみが嫌いだ!」

 先生がわめいた。

「一番嫌いだ!」

 おれは面食らった。ふたりきりで声を発するのは、じつにひさしぶりのことだ。

「じゃ、誰が好き?」

 おれはズボンを脱いで、彼の上に覆い被さった。首筋に口づけながら、その股間に指を入れていく。ペニスをなであげ、肛門に触れる。

「うふ」

 肛門をなでまわすと、その足から力がぬけてしまう。わずかに股関節がひらき、おれの手を迎え入れてしまう。

 はじめに比べて、彼の尻穴もだいぶやわらかくなった。触れれば、すぐにほどけ、ものほしげにもじもじと蠢く。すぐにピンク色のペニスをふくらませ、糖蜜をたらす。

「アア、ンッ」

「嫌いだけど、おれに撫でられるのは好きだね」

 先生はもう答えない。足をひらき、されるがままに尻穴を差し出し、うつろにあえいでいる。
 おれは彼のなかに入り込んだ。

「クッ」

 きれいなあごがのけぞる。ペニスから痛いような快感がつきあがった。
 おれは快感のつきぬけるままにうめき、感じきった。からみつくぬめり。獲物の体温。息苦しいような圧力。

 目の前の獲物はかなしいほどきれいだった。
 憂いの深いうるんだ眸。おれの腕に遠慮がちにかけられた指。

 細い腰は股を大きくひらかれ、おれを受け入れてふるえている。そのペニスは反り返って濡れ、おれの腹をよごしていた。
 おれは駆け出し、彼の肉をむさぼった。

「アアッ」

 先生が腰をつきあげ、反り返る。

「あ、ンンッ――はアッ」

 慣れてきたものだ。彼の腰はおれにすがるように揺れているし、尻の穴もよくなじんでいる。

(惜しいな)

 今夜が最後と思うと、いつもよりいっそうきれいに見えた。おれは火の玉のようになって彼を突き上げた。
 自分でもわかるほど、きらいだ、という言葉に興奮していた。



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