(また――)
まだ朝だ。昨日のいじめで疲れ果てている。おれは逃げ出したくなったが、主人が入ってきた。ヘイゼルの目が一瞥し、グズグズするな、とうながす。
おれはしかたなくテーブルに尻を乗せた。
「もっと真中で寝るのよ」
テーブルの中央まで出て仰向きに寝る。大男の客がまた言った。
「足を抱えろ。右手で右ひざの裏を、左手で左ひざの裏を持つんだ」
おれは唇を噛んだ。そんなことをすれば、何もつけていない陰部が露出してしまう。
「早く。フォークで刺されたいのか」
おれはのろのろと足をあげた。視線が尻に集まり、恥辱感に血がわきたつ。頬が焼けそうだ。
女はクスクス笑った。「お尻の穴がかわいいわ。こんなところにも毛が」
「この唇は濡れているじゃないか。使いこんだばかりか」
とがったものがそっと会陰に触れる。おれはあわてて靴で隠そうとした。
「この足、面倒だな。そこから吊るしておくか」
黒髪の男が食卓の上にある梁を指差した。すぐにロジェが椅子にのり、縄をわたす。その先におれの足をひとまとめにくくり、尻が浮くほど引き上げた。
おれは早くも泣きたくなった。
「ゼリーは」
「ここよ。中まで押し込んでやって」
力強い指が尻をつかむ。熱い指がアヌスに触れた。すぐにめりこんでくる。
「あっ」
「――牝犬、朝から変な声を出すな」
指が熱い。いやゼリーが熱い。それは粘膜を通って脊髄に届いた。
(もう、いやだ――)
またあれがはじまる。薬で強制的に狂わされる。すでにからだがざわめいている。昨日より早い。
(あっ――い、いやだ。やめ――)
「レイ、こいつを悦ばせるな。犬が腹をすかしてる」
「このアマが吸いついてくるんだ」
黒髪の男にからかわれ、男は指を抜いた。
おれはあわてて声を噛んだ。快楽に浮き上がりかけ、急に愛撫を切断されてうろたえてしまった。
「はしたないぞ。皿のくせに」
「タフィ。ごめんなさい。今、お皿に入れるわね」
指ほどの細いものがめりこんでくる。それがおさまると、女はさらに同じものを押し込んだ。おれは気づいて目をとじた。ジャーキーだ。
皿とはおれの尻のことだった。
女はいくつもそれを詰め込んだ。その刺激だけでたまらなかった。異物に内臓が慄いているにもかかわらず、目の前に火が散る。もっと欲しくて、からだがうずく。
「さあ、いいわ」
女は口笛を吹いた。軽いものがテーブルにとびあがる。「いいわね。一個ずつ食べるのよ」
犬のやわらかい毛が尻に触れる。
「ひっ」
からだから何かが引きずり出された。その感触に髪の毛が逆立ち、ペニスがふるえる。
(くそ――)
つながっている。ジャーキーじゃない。ウインナーのようにつながって入っている。犬が食べるごとに中からずるずる引き出される。
「い……アッ――ハッ」
からだは炉のように悶えている。アヌスをなぶるかすかな刺激が脳天を突き上げてくる。こらえきれず、声が出てしまう。
「うるさいな」
黒髪の男が笑った。「皿がよがるなよ」
メアリ、と主人のたしなめるような声が呼んだ。
「口をあけて」
目の前にパンがあった。おれはうちふるえそうになった。
――喰えというのか。この状態で。
「ほら」
主人はちぎって、無理におれの口に押し込んだ。むせて吐き出そうとすると口をおさえる。
「食べるんだ。いい子だ」
いい子だ。その声に逆らえない。おれは首をねじり、苦労して飲み込んだ。その間も犬が尻から肉を手繰り出す感触にふるえる。
「ほら」
また主人が顔の上にトマトを吊り下げている。おれは泣きそうだった。気が狂いそうだ。
隣の黒髪の男がつまらなそうに聞く。
「ルビー。この子の服の替えはあるのか」
「あるよ」
「わたしもこの皿の味がみたい」
主人はなんでもないことだ、とおれの首の下に手を差し入れ、ホックをはずした。肩から服をひきずりおろす。
おれは必死に顔をそむけた。ジムで鍛えているせいで、おれの胸は厚い。胸毛も濃い。レースのブラジャーはグロテスクだろう。
黒髪の男はかすかに息をついたようだった。彼はおもむろに何かを取った。
胸に冷たいものが垂れてきた。男はスプーンでおれにメープルシロップを垂らしていた。
ぎょっとして見上げた時だった。男は舌を出しながら覆い被さってきた。
おれは叫びそうになった。生暖かい舌が胸の上のシロップをなめている。鼻息を吹きつけ、湿った音をさせ、執拗になぶる。
さらにもうひとりの男も近づいてきた。彼は何も言わず、いきなり口づけてきた。
「ウッ――」
舌がおおぶりに動いて呼気を奪う。ふたりの男に口と胸を嬲られ、おれは手で防ぎそうになった。その手を押さえられる。
身動きできず、おれは不器用に体をくねらせて悶えた。アヌスは畜生にせわしく責められ、浮き上がってしまっている。
いとわしく、おぞましく、甘美だった。淫らで狂おしい。脳がとけ落ちてしまいそうだ。
だが、さびしい。快楽だけではさびしい。
(ご主人様――)
主人はまったく、ふたりの男にかまわす、退屈そうに紅茶を飲んでいる。おれはそのヘイゼルの目に懇願していた。
――こんなのいやだ。きみがいい。ぼくを上へ連れて行って。
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