男たちはおれの背から飲み物のトレイをとりあげた。おしゃぶりの化け物も取り去った。
尻のほうは放っておいたまま、おれの鼻先にペニスを押し付けた。おれはかしづき、口にふくみ、ていねいにそれを愛撫した。
「待ち時間が長いな」
ロジェがハーレー卿に犬を連れてきてもいいかたずねた。
「あまり甘やかして欲しくないのだが」卿はおれの愛撫に少し声をかすらせて許可した。ロジェが扉をあけてジェレミーを迎え入れた。ジェレミーは本当の犬のように転げこんできた。
主人に近づけず、おれの背のまわりをうろうろして、哀しげに鼻を鳴らす。
「あっちへ行っていろ。シッ」
卿が手を振るとロジェがその細いからだをさらった。
「おまえはこっちだ。サイモン、来いよ」
おれはちらりと主人のほうを見た。主人もジェレミーに触れている。顎をとってキスしていた。
「こら、どこを見ている」
ハーレー卿はおれの頬を軽く叩いた。卿のやさしげな目がのぞきこむ。
「痛いのは嫌いかね。痛みは絶大な快楽だ。おれに身を預けろ。きみの細胞を作り変えてやる。信号はすべて逆に走る。おれの目の動きひとつで世界の色を変えてやる」
襟の中から手をさしのばし、乳首に触れる。つまみ、爪をたてた。
(つっ――)
ペニスに歯をたてそうになってしまう。だが、彼はさらに爪をたて、ちぎらんばかりにつねった。目から涙がにじむ。
「かわいい顔だな」
声はかすれていた。口のなかのものがいっそう膨れ上がっていた。
「長いなあ。わたしもいいですか」
背後から、アントニーノの声が近づく。
「後ろには何か入っているぞ」
「ああ」
イタリア人は笑い、主人を呼んだ。主人が近づきかがむ。
「メアリ。力を抜いて」
からだに食い込んだおもちゃがずるりと抜け出て行く。あちこちでっぱっているために抜けずらく尻がまくれあがりそうになった。
空洞になった。と思うと熱いものがかわりにすべりこんできた。
(ああっ)
生き物の熱というのはなんて雄弁なのだろう。なんとたやすく肉体を呼び覚ますのだろう。
「やわらかくなっている。でも素敵だよ」
イタリア人は満足げに呻きながら腰をスライドさせた。おれはハーレー卿の腰にしがみついた。くらみ、喘ぎながら舌をつかう。
(――ご主人さま)
イタリア人がスカートをまくりあげ、腰を丸出しにしている。背まで出して、愛撫している。
彼のペニスは硬く長い。おれのなかを遊ぶように優雅にストロークしていた。
(ご主人さま。許して――)
知らない男のペニスをほおばっている。生き物のにおいが鼻腔に満ち、肺腑を犯している。知らない男が尻をもてあそんでいる。だが、おれは快楽のために失神寸前だった。おれのペニスは硬くいきり立ち、火花を散らせている。スカートが触れたら爆発してしまう。
「いやだ。できない。やめ――!」
獣じみた悲鳴があがった。けたたましいサイモンの笑い声が続く。
「ひゃあ、本当に二本入った」
ロジェがうわずりながらなだめる。
「落ちつけって。さあ、腰をゆするんだ。ほら。すごくイイぞ」
おれは熱に浮かされた目を向けた。
ジェレミーはふたりの巨漢にはさまれて泣き叫んでいた。彼の足の間にはふたりのペニスが突き刺さっていた。
おれは酔っていた。主人の命にも客の命にもすでにたじろがなかった。
おれとジェレミーはレズ用のふたつつなぎのバイブで愛し合うように命じられた。
ふたりで同時にアヌスを犯し合い、足をからませ、ペニスをすりつけて、キスを浴びせた。彼はおれの乳首を吸い、おれはベルを引っ張って、彼を泣かせた。彼の泣き声がかわいらしく、おれは夢中になってしまった。一度達してもまだ醒め切らず、おれは彼を愛撫しつづけた。
夜中、客たちは帰っていった。
おれは主人に従って寝室に戻った。部屋に入ると同時にふたりで転がるように抱きしめあった。たがいに服をはぎとり、素裸になってベッドにもつれこむ。
彼の熱を感じてふるえが走る。硬い筋肉に抱きしめられ、その甘さに気をうしないそうになった。
「ご主人さま。ぼくのご主人さま」
愛撫もそこそこに彼はおれのなかに入ってきた。激しく突き崩してくる。おれはあられもない声をあげた。
――どうしてだ。
今日、何度射精したかわからない。疲れて足もたたないはずだ。おれはいくつだ。十七じゃなかったはずだ。
だのに、この男の腕が欲しくてたまらなかった。ほかの男に抱かれながら、どこかでこの熱いペニスを待っていた。
「ああっ」
どっと快楽が落ちてくる。波が浜を浸すように光のしぶきがつま先まで満ちていく。頭のなかが軽くなってしまう。
「だめだよ、こら」
主人は笑い、おれをひっくりかえして乳首にキスした。彼のペニスはまだ硬い。乳首を執拗に愛撫して熱を呼び覚まそうとする。
おれのからだが簡単に落ち着かなくなる。息が苦しいというのに、またもあやしい熱が一点をめざして集まってくる。
「あ……もうだめです……」
ご主人様、と哀願する。主人は許さない。乳首を吸い、片手でなぶる。腹のなかによどんだ快楽のにごりがひたしていく。
(あ……)
おれは首をふっていた。おれのからだには豊かな乳房があった。腕はやわらかく、逞しい男の腕に抑えられて役にたたない。張り出した腰のなかには蜜の炉が燃えている。主人の猛々しいペニスにおののき、ふるえ、熱い蜜を滴り落としていた。
主人はおれの足を肩にかつぎあげた。滾った炉が露になる。淫らな露に濡れ、待ちわびてひくつく花が無防備に押し出される。
ふたたび剣が沈み込む。
「くっ――」
脳天まで光が突き刺る。光は津波となって襲い、小波となっておれをじらす。
「ご主人さま……」
おれは囚われたプリンセスだった。白いドレスを汚され、足を開かれ、むくつけき敵の兵士に操を奪われている。両足をかつぎあげられて、痛みに泣き、無理やり与えられる快楽に嬌声をあげている。
「ああっ――ご主人さま」
雷電がからだに落ちる。おれは痙攣し、すべての制約を破裂させた。同時に主人のからだも跳ね上がり、小刻みにふるえた。暖かいものが体の中に放たれる。
主人の熱いからだが落ちてきた。汗にぬれた熱い肌。熱い息。彼は喘ぎながら、おれに口づけた。
息が苦しい。だが、おれは支配者の舌を受け入れ、痺れるように甘さに陶酔していた。
「いい子だ。おまえはいい子だよ」
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