ディオニュシア祭 第4話


 時計が夜中の二時を打つ。

 すでに明かりを消され、ダイニングにはおれひとりが残っていた。おれはぼんやりと床を拭いていた。

 小便のにおいがまだ残っている。放されたとたん、失禁してしまった。

「そいつを拭いておきな」

 男たちはようやく解放してくれた。

 すでに誰も見張っていないというのに、おれは床に這いつくばっていた。何か言われるのがおそろしく、やめられなかった。下着にもストッキングにも小便は染みて冷たい。だが、どうしたらいいかわからず、ただ、床を拭きつづけた。





 二日目





「おはよう、メアリ」

 金髪の男が階上から降りてきた時、おれは不意に泣き出しそうになった。この混沌は彼が支配している。この男がコントロールしてくれないと、世の中はめちゃくちゃになってしまう。

「どうした。返事は」

「おはようございます。ご主人様」

 とがめたが、主人はそれほど厭な顔はしなかった。やや苦笑し、

「くさいな」と言った。

 おれはみじめにうつむいた。

「来い」

 主人は言い、二階へ階段をあがった。おれはその後を犬のようにとぼとぼついた。
 主人は寝室についているバスルームの戸をあけた。

「全部脱げ」

 ようやくこのばかばかしい衣装を脱ぐことができる。全裸になるのにためらいはなかった。
 主人はワイシャツの袖をまくりあげると、シャワーを出した。

「ほら、おいで」

 洗ってくれるというのである。困惑したが、命令だ。おれはしおしおと中へ入った。

 主人は足から順に湯をかけてくれた。尿が洗い流され、ようやく人心地がつく。彼は犬か何か洗うように手際よく、おれを洗った。おれは阿呆のようにつったって、髪が洗われ、髭が剃られるのをじっと待っていた。

「まったくおまえはきれいだ」

 主人は湯を浴びせながら笑った。「精悍な馬のようだ。首と背と腰のラインの見事さ。なんてセクシーな尻だ」

 石鹸のついた指で尻をなでる。その指が割れ目をとおり、アヌスに触れる。指は苦もなく中にもぐりこんだ。

 鳥肌がたち、おれは眉をしかめた。変な色気を見せれば昨日のように叱られてしまう。

「かわいい子だ」

 唇になにかが触れた。一瞬のキス。主人は笑い、指を抜いた。

「出ろ」

 あきれたことに主人は同じメイド服をもうひと揃え持っていた。清潔な下着もあった。ふたたび女にされていく。

 だが、おれはそれほどためらわなかった。かわいい、などと言われて少しおかしな気がしていた。





 女性が解放され、真っ先になくなったのがメイドの仕事だという。
 なるほどメイドの仕事というのは単調で面白くない。リネンを変えたり、食事のサーブをしたり。

 だが、そこに色気がまじるとこれらは奇妙な愛撫にかわる。主人はおれの尻のなかに妙なゼリーをぬりたくっていた。そのおかげで下腹がうずいてしかたがない。

 シーツをかえても、ベッドに太ももが触れるとからだがざわめきたつ。皿を出す時、かがむと屹立した物にペチコートが触れる。

 皿など投げ出して、解放したいが、ふたりの巨漢が見ていた。昨日のリンチで、おれはすっかりこのふたりにふるえあがっていた。

「メアリ」

 主人はテラスにおれを呼んだ。一応、外から見えない庭だが、野外である。おれはためらいつつも、主人の傍らに行った。

 主人が手にふれる。刺激に敏感になっていたおれは、生唾を飲んだ。あわてて目をそむける。

「頬が赤いね」

「……はい、ご主人様」

「からだが火照ってしかたないのか」

「は、い。ご主人さま」

 主人は含み笑いした。

「おまえはケツ……いや、膣でイケるのか」

 おれは生娘のように恥じ入った。アヌスにぶちこまれるのが好きだ。入れられて、めちゃめちゃに突かれたくてしょうがない。女のように泣きたい。

「はい……ご主人さま」

 わずかに期待してしまった。だが、主人のヘイゼルの目には軽侮の色があった。
 おれは棒で打たれたようにしゅんとなってしまった。

「いやらしい子だ」主人は鼻でわらった。「よし、イクとこを見せてくれ」

 テーブルの上に出したのはローションと紫色のバイブだった。それほど大きくはないが、でこぼこといろんな突起が出ている。

「おれは女性が自慰をするところを見たことがないんだ。そこで見せてくれ」

 そこ、とあごをしゃくった先は庭の何もない芝の上だった。おれはうろたえて、主人を見た。外だ。こんな陳腐な格好をしている。

 だが、ヘイゼルの目は眠そうに見返した。

「ロジェとサイモンに押さえつけてもらいたいか。自分でやるより痛いぞ」

 おれは泣きそうになった。足がふるえてくる。だが、もう一度主人にせかされるのがこわい。

 ローションを手にとった。バイブにたらし、べとべとにぬりつける。尻にも指をはわす。冷たい感触が肛門に触れた時、足もとが浮き上がりかけた。

(ああ……)

「メアリ。そこで楽しむんじゃない。その芝の上に腰をおろし、両足をひろげてくれ」

 主人はおれの背を叩いてうながした。おれはおもちゃをもって、とぼとぼ草の上に立った。

 日差しがからだに落ちてくる。少しは着なれた衣装が陽のもとにでると、ひどくばかばかしい。片手に持っているおもちゃはもっとばかばかしい。

 ここはいつも妻と茶を飲む庭だ。ほんのひと時、風に吹かれて安らぐ場所だ。

 だが、今は男が前からおれを見ていた。金髪の美しい悪魔。ヘイゼルの双眸でおれを粉々にする。

 おれはおずおずと腰をおろしかけた。
 パンティをおろす手がもたつく。足から抜き取ると、下着はこぶしほどに小さくなった。

「おまえの愚図にもだんだん飽きてきた」

 主人が苛立った声を出した。「サイモンにやってもらうか」

「も、申し訳ありません。ご主人様」

 おれは草の上に尻をついた。草の感触が敏感な陰部を刺す。おれはためいきをついて、バイブに電源をいれた。

「あっ」

 振動は小さかった。それでも刺激に飢えていたアヌスには狼のように獰猛だった。

「ン……」

「スカート!」

 主人の声とともにティースプーンが草の上に飛ぶ。おれは気づいて、スカートをまくりあげた。
 猛り立った陰部があらわれる。脈打ち、粘液に光り、命をおびてなまなましい。

 おれはペニスに触れようとした。その途端、主人がたしなめる。

「メアリ。クリトリスに触るな。膣だけでいけ」

 主人の声がやさしくなったことに気づいた。おれは安心して、バイブを中へもぐりこませた。

(ああ――)

 全身にこまかな泡が湧き立つようだった。バイブの振動が確実に弱点を突いている。だが、ペニスに触れないと解放はむずかしかった。おれはバイブの振動を強くし、そこに押し付けた。

 喘ぎに声がまじっていた。情けないような弱々しい声だ。女の声。
 知らず手が乳房に触れていた。架空の乳房。ブラジャーの上を恋人の手と思ってなぶる。たくましい恋人がおれをめちゃくちゃに犯している。おれは快楽のなかで泣き叫ぶ弱い女。尻が重く、乳房が重く、疼く快楽のために男の手を逃れることができない。

 


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