キスミー、キミー 第26話 |
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「あんたはなんで、おれだと気安いんだよ」 「?」 「キミーには紳士ぶってるくせに」 「ピートはいいんだ」 「なんで」 「おれをきらいだからさ」 ピートは笑い、愛情をこめて暗闇を見つめた。 暗闇のなかでは、リコが腹くちた獣のようにくつろいでいる。食べ飽いて、あくびをするように、おだやかな顔をしているのがわかる。 ああ、きらいだ、とピートは言った。 「あんたはタフで、なんでも出来て、モテモテの特殊部隊員だからな。これで失読症でなかったら、許せんよ」 リコの影が可笑しげに黙っていた。 やがて、ぽつりと、 「牛乳ひとつ、まともに買えなかったよ」 と言った。 ピートは影を見つめた。 「ガキの頃、買い物をいいつけられて、いつも間違ったものを買って帰った。成分無調整とか、ローファットとか、読めなかった。親はヒステリーを通り越して泣いたよ。なんて役に立たない人間なのって」 「ひでえな」 ピートは同情した。 「買って帰ったらまず、ありがとう、だろうに」 「おれも面白くないから、全然直そうとも思わなかった。そしたら、出て行きやがった」 「おふくろさんが?」 リコは笑った。 「家出しちゃったんだよ。まいった」 「で、どうしたんだ」 「しょうがない。おぼえたよ。成分無調整」 ふたりは笑った。だが、リコはすぐ黙った。 「なに」 もう口を開かない。しゃべりすぎた、と思ったのだろう。 (すぐ、これだ) ピートは苦笑した。この男は傍に寄ると、小娘みたいに遠ざかる。 「あんたまだ、おれがあんたを殺せると思ってるのか」 リコは口をつぐんだ。長く黙っていた。やがて、いぶかるように言った。 「いま、銃声がしなかったか」 少し時間をさかのぼる。 キミーはベッドにうつぶせ、高く尻をあげていた。 ひらいた尻と睾丸が空気に触れている。そこにひとの視線が蟻のように這うのが、不快だった。 部屋には、盗賊団のボス、マンスールのほか、客がいた。小柄な年寄りで、歯のない口を開けてよくしゃべった。 キミーはふたりのアラビア語がわからなかった。だが、自分がこの年寄りの相手をさせられることは理解できた。 「ンッ――」 キミーは口枷を噛みしめた。背に縛められた手がはずみ、手錠が鳴る。 年寄りがキミーの陰嚢をつかんでいた。家畜でも調べるように、手のうちでもてあそび、しきりと笑った。 キミーが痛みに身をよじると、さらに強く握る。 見ているマンスールは少しイライラした。 (はやく決めてしまえ) マンスールは、キミーが短気をおこさないか心配していた。 彼はキミーがおとなしいうさぎではないことを知っていた。 ――それどころか、並の男以上に胆が据わっているのではないか。 と、思っている。 キミーはマンスールに屈服してはいない。 抱かれたが、恐れてはいなかった。叩き、脅し、中国式の拷問――ビニール袋を顔にかぶせて窒息させても無駄だった。 はじめて抱いた翌日、マンスールはそれを思い知った。彼は自分のベッドの上に、キミーのメッセージ――ころころと黒い大便が落としてあるのを見た。 (またクソをひる気じゃないだろうな) あらわになったキミーの小さい尻穴を見て、マンスールは気が気でならなかった。 「どちらにします? 老よ」 「どちらもよいな」 老アハマドは好色な笑いを浮かべ、 「両方だ。両方、かわいがってやろう」 マンスールは慇懃に会釈し、室を退いた。 アハマドの選ばなかったほうに、自分の伽をさせようと思っていたが、彼はあきらめた。 とにかくこれで現金が手に入ったのだ。米ドルで。何かあってもすぐに逃げられる。 彼はドアの外の護衛に、 「ご老体だ。小僧どもをぬかりなく見張れ」 と命じ、その場を離れた。 冷たい金属がキミーの尻を這っていた。 陰嚢をなぞり、肛門を撫でまわしていく。歌うようなアラビア語のささやきとともに、無骨な感触がやわらかい粘膜をいたぶった。 (神様――) キミーは目をつぶり、奥歯を噛みしめた。 老人が握っているのは拳銃だった。安全装置ははずしている。老人のきゃしゃな手と、興奮ぶりに、キミーは冷や汗が噴き出す思いがした。 すぐ隣で、赤毛の若者がふるえていた。モンティというこの青年は、ハンサムだったが、ひどく臆病だった。 自分がまだ何もされていないのに、泣き出してしまっている。 彼もまたヴィラの犬だった。数日前に主人といっしょにとらわれたという。主人は地下にとじこめられているらしい。 (モンティ。大丈夫だよ) キミーは励ましてやりたかった。口枷のために、言葉をかけてやることはできなかったが、目だけを向けて気持ちを伝えようとした。 その時、いきなり爆音がとどろいた。 キミーはベッドから転げ落ちた。 (やられた?) 赤毛の若者が悲鳴をあげた。 すぐにドアが開き、護衛が飛び込んでくる。老人はカカと笑い、あわて者の護衛を叱った。 シーツの上に黒い穴が開いただけだった。 護衛は渋面をつくって出ていった。 老人はいたずらに大いに満足したようだった。立ち上がり、むせび泣いているモンティの赤毛をつかみ、ベッドにひきずりあげた。つづいて、キミーをベッドにひきあげる。 ふたりの口枷を解き、アラビア語でなにか命じ、手でジェスチャーをした。 キミーは理解した。 「モンティ。レズショーをやれって言ってるとおもう」 モンティは巻き貝のようにちぢんでしまい、頭も起こせない。 「ママ、ママを呼んでくれ。死んじまう」 「モンティ。大丈夫だよ。キスさせて」 埒があかないと見た老人が、怒声をあげ、モンティの髪をつかみあげる。わめき、銃床で彼の頭をガンガン殴りつけた。 キミーはその隙にモンティのペニスを口に含んだ。それはちぢみあがって綿のように力なかったが、キスよりも早く、泣きやませることができる思った。 「ああ」 モンティの息がしだいに荒くなる。すすり泣きが熱を帯び始めた。 口のなかでペニスがかさをまし、はちきれんほど膨れてくると、キミーは口を離した。 「今度はおれにやって」 モンティはもう泣いていなかった。彼はすなおに股間にもぐり、キミーのペニスを口に含んだ。 「ん――」 あたたかい舌が尿道口をなぞり、キミーは甘いため息をついた。身をそらせ、ペニスを包む快楽に、うっとりと目を閉じ、 「あは、いいよ。モンティ、すごくすてき――」 ことさらにしゃべって、相棒をはげます。さらに、 「お尻をあげたら、もっといいかも。きみのお尻、とってもキュートだから」 キミーは老人にこのショーを楽しませるつもりだった。 早く抱かせてしまいたい。この乱暴な老人にいつまでも銃を握らせておきたくなかった。 ――撃たれたら、リコがかなしむ。 恋人のためにも絶対に死ねないと思っていた。 「アんッ――」 キミーは鼻にかかった声をあげ、モンティに頼んだ。 「お尻、ふってみて。おれが欲しくてしかたないみたいにさ。待って」 地下じゃこうやるんだ、と彼はもう一度、モンティのペニスをほおばった。 口腔でそれをしごきあげつつ、尻をふりたてる。ひざをひらき、尻穴をひらき、そこに尻尾があるかのように揺らした。 老人は興奮し、甲高い声をたてて笑った。 「すげえよ。キミー」 モンティはのぼせたようにあえいでいた。 「入れたくてたまんねえ」 「だめだよ」 キミーは顔をあげ、胸をすりよせた。首をからめながら、腰を押しつける。ペニスを擦り合わせ、透明な蜜を塗りあう。 縛られ、不自由なからだをからませあって、ふたりは喘いだ。 「たのむ。キミー」 キミーの閉じた足の間に、モンティがペニスを差し入れる。膝立ちになったまま、モンティははげしく腰をふりたてた。濡れたペニスがキミーの陰嚢と会陰をこすりあげる。 「ああ、モン――だめ、アアッ」 快楽の塊が身のうちを駆け回っていた。キミーはのけぞり、はげしく喘いだ。何度か懇願するように老人に視線を送る。 老人は赤口をあいて、ショーを見るばかりだった。マスターベーションさえしていない。 やっとわかった。 (こいつ、不能か) べつにかまわなかった。キミーはくるりと向きをかえ、たかだかと尻を突き出した。 「モンティ、いいよ。やって!」 |
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