第4話 |
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なにも考えられなかった。 真っ白になり、身動きひとつできなかった。悲鳴すら出ない。 喬任がにんまりと笑っていった。 「手間がはぶけた。じゃ、ごちそうになろうかな」 おれは彼が服を脱ぐのをぼう然と見ていた。いったい何が起きているのか。これは夢なのか。 どうやって、こいつはここに入ったのか。モルジブに行ってるはずだ。まだ行ってなかった? そして、おれは――。 おれはこの姿を他人に見られた? この洗濯ばさみを。変態趣味を。みっともないよがり顔を。 気をうしないそうだった。 だが、目の前に日焼けした男の裸が立った時、われに返った。 目の前に大きなペニスがあった。半ばもたげ、えらの張った亀頭がにおいたつように濡れ光っていた。 (!) い、いやだ。本物はいやだ。 おれはエビのように跳ねて逃げた。すぐに喬任の長い腕がつかむ。 「ンーッ、フグーッ」 おれは目を?き、両足で跳ね、ふりもがいた。奇しくも妄想のなかと同じだが、色気どころではない。恐怖でうわずりきっていた。 「いいこだ。いいこ」 喬任の強い腕が、尻からオモチャをずるずる引き抜く。尻肉をつかまれ、ゆるんだ肛門が大きくひらかれた。 おれは絶叫した。 泣いていた。号泣し、小便をもらしていた。シーツを濡らし、幼稚園児のように泣きわめき、そして、力のぬけた尻穴からクソさえもらしていた。 喬任はさすがに犯しかねた。 シーツを引き剥がし、ホテルの迷惑にならないよう風呂場に持っていった。 おれはその間、アホな幼児のようにしゃくりあげていた。 混乱していた。痴態を見られた上、もらしたクソの始末までされていた。どうしたらいいのかわからない。 (死にたい) おれはバルコニーの外を見た。 飛び降りたかったが、手足を拘束したままだった。この姿で死体発見となるのはさすがにイヤだ。 いつのまにかバスタブに水を張る音がしていた。 「ケイ。おいで」 喬任が呼んですぐ、思い出したようだ。やってきて、いきなりおれを抱き上げた。 おれはあわてたが、彼は、 「洗うだけだよ」 とうるさげに言って、バスルームに運び込んだ。 トイレのティッシュで無造作におれの尻をぬぐう。さらに濡れタオルで拭くと、またひざからひょいと持ち上げた。 彼はおれを抱えたまま、バスタブに入った。 「!」 おれは湯を跳ねてもがいた。だが、すぐに喬任の長い足がからみ、おれを背中から抱きかかえた。 髪が逆立った。人間の生肌が抱え込んでいる。固い男のからだが貼りついている。 あまりのなまなましさに腰がぬけそうだった。またクソをもらしそう。 おれは身をよじり、不自由な指先で彼の腹をおしのけようとつっぱった。 「ジタバタするな」 喬任は強く抱きしめ、ふくみ笑いして言った。 「ゲームはおわり。きみは負けたんだよ」 日焼けした腕は鉄のようだった。胸をがっちり抱え込んで、動かない。どうしようもない。もうだめ。突っ込まれる。おれはまた幼児のように顔をゆがめて泣いた。 「変な子だな」 喬任は耳にキスして笑った。 「もう十分拡げてあるみたいだし、こわいこともないだろうに」 そういいつつ、片手をのばしてシャワーをとる。湯の雨を降らせると、それをバスタブのなかにもぐりこませた。 (!) 泡のような水流がおれのそろえた内ももを嬲っていた。陰毛が揺れ、淫らな感触がペニスをなぞるように動く。 おれは戦慄した。腰をひねってかわそうとしたが、喬任の重い足がおれの足をおさえた。 覆いかぶさるように抱え込み、シャワーの湯を股間に押し当てる。浮き上がったペニスの裏すじに愛撫のような湯の糸が包み込む。腹の内側を血がざわめき、駆け上るのがわかった。 涙がぽたぽた落ちた。こわかった。 他人の手にいじくられ、自分の醜い正体が暴かれるのがおそろしかった。 喬任の片手がさりげなく胸をいじっている。乳首に人差し指で触れながら、 「とてもセクシーだ。縛られるのが好きだったんだね」 (ウアア) 耳をふさぎたかった。死にたい。このまま湯にもぐって出てこなかったら、死ねるだろうか。 「返事」 おれは思わず、首を横に振っていた。 「好きじゃないのか。じゃ、誰かに無理やりさせられたのか?」 喬任の声がわらう。おれの乳首をつまんで、 「ちょっと大きいな。これも誰かに無理やりいじられた?」 からかわれて、おれはまた泣いた。 もういい。殺せ。おれは変態だ。うるさい! 何も言うな。殺せ! だが、シャワーヘッドを股の間に突き込まれ、肛門を愛撫されると、ふるえあがりそうになった。 耳元でクスリと笑い声がする。 「たまらんな。処女は」 肛門の広がる感覚に、おれは目を剥いた。 そろえた膝が勝手におどった。溺れるようにあがき、悲鳴をあげた。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ。力を抜いて」 かすれた声がからだを抱え込んでいる。湯の中でおれの尻を割り開き、太い杭に押し込もうとしている。 (!) 大きな塊が直腸にもぐりこんでいた。冷たい樹脂ではない。血の通った肉の塊だ。 おれは引き攣けそうになった。ハンカチでふさいだ口から空気を求めて、必死に喘いだ。 「そうそう。ゆっくり。ゆっくり息をして」 声はささやきながら、おれの腰をがっちり抱え、肉塊を深く推し進めてきた。 (アア、ア) 肛門がはち切れそうなほど開いていた。腹のなかを巨大な生き物が蠢いている。内臓をおしのけ、どこまでも奥深く入り込んでくる。 バイブとは違う質感のもの。それは柔軟で骨のように固い。そこには心臓があり、熱く脈打っている。生きている。背後の男とつながっている。 他人の血が流れている。他人がおれの肉のなかに入りこんでいる。 「やっぱ、狭いな」 喬任は動きを止め、息をついた。あえぎつつ、おれを両腕に抱き、なだめるように愛撫する。 大きな手が胸をおさえていた。長い指が腰を這い、ペニスを握る。 おれは反射的にひざをちぢめ、その手を押さえた。 「だめだめ」 手首でそれを防ぎ、彼はおれのペニスをさすりはじめた。 「一度出すんだ。リラックスするから」 長い指が慣れた手つきで、おれのペニスを揉みあげる。敏感な亀頭の縁を責められ、背筋をゾクリと何かが走りぬけた。 (ひ、いい) もっともプライベートな感覚が尾てい骨にせり上がってくる。いわくいいがたい甘いものがふくらみ、腰が浮きかかる。 おれは荒くなる鼻息を懸命におさえた。 ――な、なんだよ、これ。 なんだ、この事態は。現実なのか。このおれが、風呂のなかで、男に抱かれている。身を縛り上げたまま、ケツにつっこまれ、しごかれ、ヒイヒイよがらされている。 しかも、縛ったのは自分だという、ありえない間抜けさ。 「ッ!」 尿道口をいじられ、鋭い快楽が走った。おれは小さく跳ね、こらえようと腹に力を入れた。だが、爪がもぐりこむように突く。ねじいれるようになぞる。 (アッ、や――) 腰に幾筋も快楽が突きとおり、腹が震えた。尾てい骨がビンとつっぱる。 ――ッ! 身をかがめたが、おそかった。ペニスは湯に鋭く精を吐いた。 (アア) おれはあえぎ、目を閉じた。のぼせるように顔が熱くなった。 快楽の熱気と恥ずかしさで火の玉のように身の内が灼けた。いたたまれない。かき消えたい。 だが、喬任は、 「よし。いいこだ。そのままだよ」 ふたつの大きな手のひらが、おれの太ももを掴んでいた。おれの尻をわずかに浮かせる。ふたたび、ゆっくりおろし、ペニスをより深く差し込んだ。 (!) 大きなものがへそ近くまで押し入ってきた。うろたえる間もなく、すぐにそれは後退し、ずるずるとぬける。 手は湯の浮力を借りて、ゆっくりとおれの尻を上下させていた。 (あ、……アア……) おれは犯されていた。 湯のなかで、ばかげた姿――身動きならず、叫び声もあげられぬ格好のまま、生身の男根に尻を突かれていた。 それはしだいに速さを増した。揺するようにリズミカルに腰が浮沈する。 尻のなかは熱を発していた。ペニスの先がやわらかい部分を押すたびに、腹のなかで苦痛と歓喜が跳ね上がる。 おれはのたうちつつ、愕然としていた。 もう、いいわけきかない。本物のカマになった。現実のカマになった。ふつうの人生からはずれてしまった。 |
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